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2006年9月 7日 (木)

「はじめてのものに」

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立原道造

「萱草に寄す 」より

SONATINE No.1

はじめてのものに




ささやかな地異は そのかたみに
 
灰をふらした この村に ひとしきり
 
灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
 
樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた


            
その夜 月は明かつたが 私はひとと
    
窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
 
部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
 
よくひびく笑ひ声が溢れてゐた


 
――人の心を知ることは……人の心とは……
 
私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
 
把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた


                              
いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
 
火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
 
その夜習つたエリーザベトの物語を織つた






※テキストはインターネットの図書館、「青空文庫」のボランティアの皆様のお力によるものです。


青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/


BGM:Chopin 夜想曲 変ロ短調作品9-1

http://www5.famille.ne.jp/~dr-m/index.htm

TAM Music Factory

http://www.tam-music.com/index.html


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■ 孝輔のひとこと

1935年(昭和10)、立原道造21歳の夏。
立原は、7月初旬から9月末まで信濃追分の油屋に滞在し、そして、初めて浅間山の噴火に遭遇しました。そして、「エリザベート」と名付けた少女たちや画家の深沢紅子とも出会います。かつて、道造は旧制一高時代に習ったシュトルムの小説「インメンゼー」に感激していました。そして、この時期に、ここで出会った少女達への淡い気持を この、「萱草(わすれぐさ)に寄す」というシュトルムの影響の強い叙情詩集に込めたのです。1937(昭和12)年5月12日に自家出版した処女詩集でした。555 「音楽の状態をあこがれてつくつた」という「楽譜のやうな大判のうすい詩集」だったそうです。この冒頭の詩「はじめてのものに」の最後にエリーザベトの名が出てきます。彼は、軽井沢で知り合った女性をエリーザベトとかエリザと呼んでいたらしい。この詩集の「はじめてのものに」に対応する詩として、詩集の中に「のちのおもひに」と言う作品があります。それは次回に朗読アップという事で・・・・
さて、シュトルムの小説ですが、1852年に書かれ、作者自身も非常に愛着を持っていたと同時に、ドイツ文学の一粒の真珠と自負していたそうです。私も、一度読んでみたい作品の一つです。

<あらすじ>

  夕の散歩から戻ってきた、一人の老人が月の光に浮かんだ一人の女性の肖像画を目にして、若い日々を回想することから始まります。

  ラインハルトとエリーザベトは仲のよい幼友達でした。ラインハルトは上の学校へ進むため、遠くの都会へと旅立っていきます。その地の学生生活が楽しく、エリーザベトへの便りも忘れています。エリーザベトはラインハルトの友人でもある、資産家の息子エーリヒからプロポーズを受け、母親の強い勧めで結婚しました。数年後、ラインハルトはエーリヒに招かれ、湖のほとりの館におもむきます。これを知らぬエリーザベトはラインハルトの出現に平静を保つのがやっとでした。ラインハルトはエーリヒの工場や農場を見物したり、館の周辺の散策に時を過ごします。ある晩のこと民謡の収集をしている、ラインハルトはそれを請われるままに披露していると、そのなかに「母が願いは」という詩がありました。母の希望で愛する人から去り、心ならずも嫁ぐことになった娘の心情を歌ったものです。これを読んだエリーザベトはこらえきれずに、そっとその場をはずします。後を追うようにして外へ出た、ラインハルトの目に湖に浮かぶ、白いスイレンの花が目にとまります。 Suiren2この花に近づこうと泳ぐのですが、近づく事もできず虚しく岸に戻ります。 この館に滞在するうち、エリーザベトへの愛に気づいたラインハルトは、二人だけになったおり、それとなくやり直せないものかと問うのですが、やんわりと避けられてしまいます。ラインハルトは、この時永久にエリーザベトを失った事を知り、翌朝、エリーザベトの「もう戻ってこないのね」という言葉にうなづき、館を去っていきます。

  老人が我にかえると、月の光も部屋へなく、暗くなっていました。ただ、目には暗い湖上に寂しく咲く、白いスイレンがうつっているのでした。

日本シュトルム協会HPより抜粋:
http://homepage3.nifty.com/storm-japan/

Tachihara Michizo Memorial Museam :
http://www.tachihara.jp/

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コメント

どこから書き込みしようか迷ったのですが・・・

選曲が絶妙ですね。

言葉のながれ、その潮目のかわるところにぴったりと曲が添っていると、感じられました。

さりげない語り口を支える音楽。
一体となって示される情景がそこに紡ぎだされていました。

投稿: Suzuka | 2007年4月 8日 (日) 23時31分

どうも~^^
来て頂いて、感想までも書いてもらって、すみません
ありがとうございます。
立原道造・・ソネットは、なかなかいいですね~
この詩は、予備知識がない方には、なにがなんだかわからないと思いますね。
そこを、あえて選んだSuzukaさんは、さすがですね^^
私の朗読は・・・いまいちだと自分で思います。

投稿: 孝輔 | 2007年4月10日 (火) 08時59分

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