「はじめてのものに」
ささやかな地異は そのかたみに
灰をふらした この村に ひとしきり
灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた
その夜 月は明かつたが 私はひとと
窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
よくひびく笑ひ声が溢れてゐた
――人の心を知ることは……人の心とは……
私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた
いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
その夜習つたエリーザベトの物語を織つた
※テキストはインターネットの図書館、「青空文庫」のボランティアの皆様のお力によるものです。
BGM:Chopin 夜想曲 変ロ短調作品9-1
http://www5.famille.ne.jp/~dr-m/index.htm
TAM Music Factory
http://www.tam-music.com/index.html
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■ 孝輔のひとこと
1935年(昭和10)、立原道造21歳の夏。
立原は、7月初旬から9月末まで信濃追分の油屋に滞在し、そして、初めて浅間山の噴火に遭遇しました。そして、「エリザベート」と名付けた少女たちや画家の深沢紅子とも出会います。かつて、道造は旧制一高時代に習ったシュトルムの小説「インメンゼー」に感激していました。そして、この時期に、ここで出会った少女達への淡い気持を この、「萱草(わすれぐさ)に寄す」というシュトルムの影響の強い叙情詩集に込めたのです。1937(昭和12)年5月12日に自家出版した処女詩集でした。
「音楽の状態をあこがれてつくつた」という「楽譜のやうな大判のうすい詩集」だったそうです。この冒頭の詩「はじめてのものに」の最後にエリーザベトの名が出てきます。彼は、軽井沢で知り合った女性をエリーザベトとかエリザと呼んでいたらしい。この詩集の「はじめてのものに」に対応する詩として、詩集の中に「のちのおもひに」と言う作品があります。それは次回に朗読アップという事で・・・・
さて、シュトルムの小説ですが、1852年に書かれ、作者自身も非常に愛着を持っていたと同時に、ドイツ文学の一粒の真珠と自負していたそうです。私も、一度読んでみたい作品の一つです。
<あらすじ>
夕の散歩から戻ってきた、一人の老人が月の光に浮かんだ一人の女性の肖像画を目にして、若い日々を回想することから始まります。
ラインハルトとエリーザベトは仲のよい幼友達でした。ラインハルトは上の学校へ進むため、遠くの都会へと旅立っていきます。その地の学生生活が楽しく、エリーザベトへの便りも忘れています。エリーザベトはラインハルトの友人でもある、資産家の息子エーリヒからプロポーズを受け、母親の強い勧めで結婚しました。数年後、ラインハルトはエーリヒに招かれ、湖のほとりの館におもむきます。これを知らぬエリーザベトはラインハルトの出現に平静を保つのがやっとでした。ラインハルトはエーリヒの工場や農場を見物したり、館の周辺の散策に時を過ごします。ある晩のこと民謡の収集をしている、ラインハルトはそれを請われるままに披露していると、そのなかに「母が願いは」という詩がありました。母の希望で愛する人から去り、心ならずも嫁ぐことになった娘の心情を歌ったものです。これを読んだエリーザベトはこらえきれずに、そっとその場をはずします。後を追うようにして外へ出た、ラインハルトの目に湖に浮かぶ、白いスイレンの花が目にとまります。
この花に近づこうと泳ぐのですが、近づく事もできず虚しく岸に戻ります。 この館に滞在するうち、エリーザベトへの愛に気づいたラインハルトは、二人だけになったおり、それとなくやり直せないものかと問うのですが、やんわりと避けられてしまいます。ラインハルトは、この時永久にエリーザベトを失った事を知り、翌朝、エリーザベトの「もう戻ってこないのね」という言葉にうなづき、館を去っていきます。
老人が我にかえると、月の光も部屋へなく、暗くなっていました。ただ、目には暗い湖上に寂しく咲く、白いスイレンがうつっているのでした。
日本シュトルム協会HPより抜粋:
http://homepage3.nifty.com/storm-japan/
Tachihara Michizo Memorial Museam :
http://www.tachihara.jp/
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コメント
どこから書き込みしようか迷ったのですが・・・
選曲が絶妙ですね。
言葉のながれ、その潮目のかわるところにぴったりと曲が添っていると、感じられました。
さりげない語り口を支える音楽。
一体となって示される情景がそこに紡ぎだされていました。
投稿: Suzuka | 2007年4月 8日 (日) 23時31分
どうも~^^
来て頂いて、感想までも書いてもらって、すみません
ありがとうございます。
立原道造・・ソネットは、なかなかいいですね~
この詩は、予備知識がない方には、なにがなんだかわからないと思いますね。
そこを、あえて選んだSuzukaさんは、さすがですね^^
私の朗読は・・・いまいちだと自分で思います。
投稿: 孝輔 | 2007年4月10日 (火) 08時59分